サウジアラビア

【長編エッセイ】サウジの大地で静けさと出会う|ルブアルハリ砂漠と星空体験記

2026年1月15日

1. 「何もない」を見に行く旅

ある時ふと思った。
身体と心が整う場所とはどこだろうと。
スパでもない、都会でもない、神社仏閣でもない。
もっと、何もない場所──

それが「ルブアルハリ砂漠(Empty Quarter)」だった。

地図で見ると、サウジアラビア南部にぽっかりと広がる巨大な空白。
世界最大の砂の海と呼ばれるこの地に、私は「静けさと出会う旅」を求めて向かった。


2. ルブアルハリとは何か?|地球で最も静かな場所の正体

2-1. ルブアルハリ砂漠の基本情報

  • 英名:Empty Quarter(空の四分の一)

  • 面積:約65万km²(日本の1.7倍!)

  • 地域:サウジアラビア、オマーン、アラブ首長国連邦、イエメンにまたがる

ここは、人類が踏み入ることが最も困難な地のひとつ。
しかし現在は観光整備が進み、サウジ政府公認のガイド付きであれば訪問可能になっている。


2-2. なぜここに行くのか?

砂漠というのは、「何もない」のではなく、「すべてがある」場所だ。
沈黙、熱、光、時間、そして風──
それらが“情報ゼロ”の空間で交錯すると、人間の身体は逆に何かに気づき始める

鍼灸師として、人の身体を「観る」ためには、自分の心を無音にする必要がある。
私はそのために、この地を選んだ。


3. 1日目:アバヤを砂に巻いて|ベドウィンの夕べ

ジェッダから国内線でナジュラーンへ。さらに4WD車で4時間、ようやく砂漠の入口へとたどり着いた。

そこにいたのは、4代続くベドウィンのガイド「ファーレス」。
彼の家族は昔からラクダを連れてこの大地を旅してきた。


3-1. キャンプ設営と沈黙の始まり

太陽が傾く頃、テントを立てる。
火を起こし、湯を沸かし、アラビックコーヒーとデーツを振る舞ってもらう。
砂漠の暮らしは、ゆっくり、そして確実に進んでいく。

その夜、ベドウィンたちは焚き火を囲みながら、歌と語りを始めた。

彼らにとって「声を出すこと」は、歌ではなく祈り。
「沈黙の時間」が最も大切だと彼らは教えてくれた。


4. 2日目:星空と身体のリセット

夜。テントの外へ出て、仰向けになる。
声が聞こえない世界。音も、風も、虫もいない。
ただ、星だけがすべてを語っていた。


4-1. 鍼灸師として宇宙の経絡を感じた瞬間

この星空を見て、私は「経絡(けいらく)」とは宇宙そのものだと直感した。
脈、流れ、間、連なり──
人の身体の中にある気の道筋が、星々とリンクしているように感じたのだ。

足三里に触れたとき、北斗七星とつながっていた。
そんな感覚を、私は初めて味わった。


4-2. 肉体が情報を忘れていく

都会にいた時、私の身体は「通知音」「言葉」「広告」「ニュース」に反応していた。
しかし砂漠では、五感のスイッチが内側に向く。

  • 呼吸が深くなる

  • 背中が広がる

  • 頭の中のノイズが静かになる

砂の上に寝転ぶだけで、身体が整っていく。


5. 3日目:砂と風と対話する朝

朝日が昇ると、風紋が刻まれた砂の海が黄金色に輝いた。
ファーレスが言った。

「昨日見た砂は、もうどこにもない。
変わることを恐れるな。風が道を描く。」

私は裸足で砂丘を歩きながら、足裏の感覚を研ぎ澄ませていた。
足の経穴(つぼ)が、まるで砂と呼応しているようだった。


6. 実用ガイド|ルブアルハリ砂漠を旅するための手順

項目 情報
出発拠点 ジェッダまたはリヤドからナジュラーンへ国内線
必須条件 公認ガイド同行(個人での進入は不可)
推奨シーズン 11〜3月(昼35℃前後、夜は10℃まで下がる)
必要装備 防寒具、日焼け対策、水分、モバイルバッテリー
注意事項 携帯電波圏外。緊急用GPS・衛星通話をガイドが保持

7. Q&A|よくある質問

Q1. 一人旅で行けますか?
A. ガイド同行が義務ですが、1名参加OKのツアーもあります。

Q2. テント生活って危険じゃない?
A. 蛇やサソリのリスクは低め。安全管理は万全。

Q3. トイレやシャワーは?
A. 基本は簡易トイレ。シャワーなし。
 →「不便を受け入れる」ことが旅の一部。

Q4. Wi-Fiは?
A. 完全圏外。ただし、その切断こそが贅沢。


8. サウジアラビアでしかできないデジタル断食のすすめ

旅とは、情報を得ることではなく、情報から離れること──
そう確信したのが、この砂漠だった。

旅先でさえ、Instagramやマップ、レビューに頼る時代。
でも、ここには誰も何も言わない。代わりに「自分の内側の声」が戻ってくる。

🌵旅する鍼灸師のまとめ:
「自分を診るには、外の刺激を一度すべて手放す必要がある。」


9. まとめ|整うとは、情報を失っていくこと

砂漠は何も教えてくれない。
でも、その「何もなさ」が、私の中から何かを引き出した。

  • 触れるものは砂だけ

  • 見えるのは星だけ

  • 聞こえるのは風だけ

その中で、自分という存在がクリアになっていく。
「整う」とは、何かを足すことではなく、削ぎ落としていくことだった。

-サウジアラビア
-

Copyright© 旅見聞録 , 2026 All Rights Reserved.