目次
第1章:地中海の風に誘われて
トルコの旅も終盤に差し掛かった頃、私は南部の都市アンタルヤへと向かった。
理由は一つ。
水の気をたっぷりと浴び、身体と心を柔らかく整えたかったからだ。
カッパドキアとコンヤで得た「大地」と「祈り」のエネルギー。 それに対してアンタルヤには「流れ」「潤い」「解放」の気配があった。
歴史あるローマ遺跡と、透き通る地中海。 五感が喜び、自然と呼吸が深くなるような場所。
私の「整えの旅」は、この海辺の都市で最終章を迎えることになる。
第2章:アンタルヤ到着と旧市街カレイチの魅力
イスタンブールから空路で約1時間。 アンタルヤ空港に降り立つと、そこには別世界が広がっていた。
温暖な気候。ヤシの木が揺れ、空はどこまでも青く、潮の香りが漂っている。
宿を取ったのは、旧市街「カレイチ」の中にあるブティックホテル。 オスマン建築を改装した趣ある宿で、石畳の路地を歩けば、猫たちが気ままに日向ぼっこしていた。
ここでは、時間の流れが柔らかい。 「早く」「効率よく」という感覚が、自然とほどけていく。
アンタルヤは、ゆるむための場所だと感じた。
第3章:遺跡と海、歴史と自然の交差点

まず向かったのは、アンタルヤ中心部にある「ハドリアヌス門」。 ローマ皇帝の訪問を記念して造られたこの門は、2000年の時を越えて今も堂々と立っている。
続いて訪れたのは、「アスペンドス円形劇場」。 保存状態の良さでは世界有数で、今でもコンサートや演劇に使われているという。
座席に腰を下ろし、手を叩いてみる。 音が舞台に跳ね返り、まるで自分の声がローマ時代に届いていくような感覚がした。
夕方は「コンヤアルトゥ・ビーチ」へ。 波の音、遠くで遊ぶ子供たち、風に揺れる松の枝。
ただその風景を感じることが、最高の贅沢だった。
第4章:アンタルヤの整うグルメ体験
地中海沿いということもあり、アンタルヤの食文化は魚介が豊富。
旧港近くのレストランでいただいたのは、 新鮮なグリルド・シーバスと、オリーブオイル漬けの前菜メゼ。
トルコ名物「ラキ(アニス風味の蒸留酒)」を少しだけ口に含むと、体の奥まで香りが染みわたる。
そして、デザートは「トゥルンチ・レチェリ(柑橘の皮の砂糖煮)」。 この甘さと苦味のバランスが、まるで旅のようだった。
食とは、土地の気候と人の営みが融合したエネルギーそのものだと実感した。
第5章:夜の港と、静かな時間
夜、旧市街から少し歩き、港へと向かった。 観光客の喧騒が消え、波の音だけが静かに響いていた。
月明かりが海を照らし、船のシルエットが幻想的に浮かび上がる。
この時間、私は岸壁に腰掛け、目を閉じた。 何かを思い出すでもなく、何かを考えるでもなく──ただ「在る」だけの感覚。
鍼灸師としての私が、刺激や手技を使わずに整う瞬間を感じたのは、まさにこの時だった。
アンタルヤには、「何もしないことの力」がある。
第6章:旅する鍼灸師の養生ノート「アンタルヤ編」
ここで私が得た整えの処方箋をまとめてみる。
🔹旅のテーマ:水・緩・拡張
| 時間帯 | 養生アクション |
|---|---|
| 朝 | 港沿いの散歩と足湯ストレッチ |
| 昼 | 魚とハーブを使った消化力UPランチ |
| 夕 | ビーチでの座禅+海風呼吸法 |
| 夜 | 波の音を聞きながらの瞑想的時間 |
🔹鍼灸視点で見るアンタルヤ
- 地中海の風=肺・大腸経に作用(呼吸と排泄の調整)
- 湿度と食文化=脾経を補う(消化吸収)
- 海=腎・膀胱経を潤す(深層の気・水の流れ)
五行でいうなら、「金」「水」「土」の養生が整うエリアだ。
第7章:まとめ──旅の終わりは、静かな今ここ
5都市を巡ったトルコの旅は、私に多くの整う感覚を与えてくれた。
・イスタンブールで「歴史と多様性」 ・カッパドキアで「大地と空」 ・パムッカレで「浄化と再統合」 ・コンヤで「祈りと内面の静けさ」 ・そしてアンタルヤで「水と解放」
旅とは、外の世界を巡ることで、自分の内側の地図を広げていく行為だと思う。
アンタルヤの港で感じた静かな整いは、 どんな治療よりも深く、私の中心に届いた。
──これが、「旅する鍼灸師」としての旅の終わり。
しかし、本当の意味での「整えの旅」は、 もしかすると、ここからまた始まっていくのかもしれない。