トルコ

③トルコ編 青い地中海とローマの記憶──アンタルヤで過ごす贅沢な整いの時間

2025年11月24日

第1章:地中海の風に誘われて

トルコの旅も終盤に差し掛かった頃、私は南部の都市アンタルヤへと向かった。

理由は一つ。
水の気をたっぷりと浴び、身体と心を柔らかく整えたかったからだ。

カッパドキアとコンヤで得た「大地」と「祈り」のエネルギー。 それに対してアンタルヤには「流れ」「潤い」「解放」の気配があった。

歴史あるローマ遺跡と、透き通る地中海。 五感が喜び、自然と呼吸が深くなるような場所。

私の「整えの旅」は、この海辺の都市で最終章を迎えることになる。

第2章:アンタルヤ到着と旧市街カレイチの魅力

イスタンブールから空路で約1時間。 アンタルヤ空港に降り立つと、そこには別世界が広がっていた。

温暖な気候。ヤシの木が揺れ、空はどこまでも青く、潮の香りが漂っている。

宿を取ったのは、旧市街「カレイチ」の中にあるブティックホテル。 オスマン建築を改装した趣ある宿で、石畳の路地を歩けば、猫たちが気ままに日向ぼっこしていた。

ここでは、時間の流れが柔らかい。 「早く」「効率よく」という感覚が、自然とほどけていく。

アンタルヤは、ゆるむための場所だと感じた。

第3章:遺跡と海、歴史と自然の交差点

まず向かったのは、アンタルヤ中心部にある「ハドリアヌス門」。 ローマ皇帝の訪問を記念して造られたこの門は、2000年の時を越えて今も堂々と立っている。

続いて訪れたのは、「アスペンドス円形劇場」。 保存状態の良さでは世界有数で、今でもコンサートや演劇に使われているという。

座席に腰を下ろし、手を叩いてみる。 音が舞台に跳ね返り、まるで自分の声がローマ時代に届いていくような感覚がした。

夕方は「コンヤアルトゥ・ビーチ」へ。 波の音、遠くで遊ぶ子供たち、風に揺れる松の枝。

ただその風景を感じることが、最高の贅沢だった。

第4章:アンタルヤの整うグルメ体験

地中海沿いということもあり、アンタルヤの食文化は魚介が豊富。

旧港近くのレストランでいただいたのは、 新鮮なグリルド・シーバスと、オリーブオイル漬けの前菜メゼ。

トルコ名物「ラキ(アニス風味の蒸留酒)」を少しだけ口に含むと、体の奥まで香りが染みわたる。

そして、デザートは「トゥルンチ・レチェリ(柑橘の皮の砂糖煮)」。 この甘さと苦味のバランスが、まるで旅のようだった。

食とは、土地の気候と人の営みが融合したエネルギーそのものだと実感した。

第5章:夜の港と、静かな時間

夜、旧市街から少し歩き、港へと向かった。 観光客の喧騒が消え、波の音だけが静かに響いていた。

月明かりが海を照らし、船のシルエットが幻想的に浮かび上がる。

この時間、私は岸壁に腰掛け、目を閉じた。 何かを思い出すでもなく、何かを考えるでもなく──ただ「在る」だけの感覚。

鍼灸師としての私が、刺激や手技を使わずに整う瞬間を感じたのは、まさにこの時だった。

アンタルヤには、「何もしないことの力」がある。

第6章:旅する鍼灸師の養生ノート「アンタルヤ編」

ここで私が得た整えの処方箋をまとめてみる。

🔹旅のテーマ:水・緩・拡張

時間帯 養生アクション
港沿いの散歩と足湯ストレッチ
魚とハーブを使った消化力UPランチ
ビーチでの座禅+海風呼吸法
波の音を聞きながらの瞑想的時間

🔹鍼灸視点で見るアンタルヤ

  • 地中海の風=肺・大腸経に作用(呼吸と排泄の調整)
  • 湿度と食文化=脾経を補う(消化吸収)
  • 海=腎・膀胱経を潤す(深層の気・水の流れ)

五行でいうなら、「金」「水」「土」の養生が整うエリアだ。

第7章:まとめ──旅の終わりは、静かな今ここ

5都市を巡ったトルコの旅は、私に多くの整う感覚を与えてくれた。

・イスタンブールで「歴史と多様性」 ・カッパドキアで「大地と空」 ・パムッカレで「浄化と再統合」 ・コンヤで「祈りと内面の静けさ」 ・そしてアンタルヤで「水と解放」

旅とは、外の世界を巡ることで、自分の内側の地図を広げていく行為だと思う。

アンタルヤの港で感じた静かな整いは、 どんな治療よりも深く、私の中心に届いた。

──これが、「旅する鍼灸師」としての旅の終わり。

しかし、本当の意味での「整えの旅」は、 もしかすると、ここからまた始まっていくのかもしれない。

-トルコ
-,

Copyright© 旅見聞録 , 2025 All Rights Reserved.